
小笠原諸島には、アカガシラカラスバトという固有のカラスバトの亜種が生息していて、その個体数は推定わずか40~60羽と言われている。このハトを絶滅から救うためにどうしたらよいかという保全活動計画を作るための国際ワークショップが、1月10日~12日の3日間、父島で開催された。
正確にはPHVA(Population and Habitat Variability Analysis:個体群および生息地の変動性分析)ワークショップと呼ばれ、国際自然保護連合(IUCN)から希少動物種保護・増殖の専門家を迎え、それにアカガシラカラスバトの保護・増殖に関係する、できるだけ多くの関係者を巻き込んで、3日間ワークショップ会場に缶詰めになってみんなで計画をつくるというもの。
関係者とは、具体的には、環境省、林野庁、東京都、小笠原村、上野動物園(アカガシラカラスバトの飼育をしている)等の公的機関、獣医さん、地元のNPOのスタッフや地元のツアーガイドの方々等々、総勢100名を超える人たちが集った。やっそは、このワークショップに事務局ボランティアとして、またカタコトの英語を喋れることから、海外から迎える専門家のサポート係として参加させてもらった。
この手法は、日本では他にツシマヤマネコとヤンバルクイナの2種、その他世界各地で採用されていて、多くの成果を上げている。今回のワークショップに参加して、この成功の秘訣を目の当たりにした。
その秘訣とは、様々な形でアカガシラカラスバトの保全に関係する関係者が一堂に会して、3日間で保全計画を作成するという目標を共有して、そのことだけを考えて3日間議論し通すこと、そして希少動物種保護・増殖の実践経験を豊富に持つIUCN専門家の存在。
関係者が一堂に会することで、3日間という期限つきのプレッシャーを共有することで、議論を先送りにせず、次々と片付けていくことができる。議論を進める中で、必ず焦点となるのが、どれほどの数のアカガシラカラスバトを、どのような形で維持すれば絶滅が回避できるのかということ。
そこは専門家の出番、様々なケースを想定して、絶滅確率を算出するコンピューターシミュレーションをその場で走らせて、その場で結果を得る。そしてその結果を反映して更に議論を進めることができる。このシミュレーションは専門家の重要な役割ではあるが、一方で、議事進行を務めるファシリテーターとして、議論を保全活動計画策定という目標に向かって導いていくことも重要な任務。豊富な経験に裏打ちされた、柔軟かつ的確な采配で、100名以上もの大勢の参加者により執り行われる議論を、アカガシラカラスバトの保全活動計画にまとめ上げていく。
このようにしてつくり上げられた保全活動計画は、今年4月に正式な形で世に出ることになっている。アカガシラカラスバトを後世に亘って守っていく活動はここでスタートを切ったばかり、この計画にもとづいた今後の活動そのものがとても大事になってくる。
今回このワークショップに参加して、世界的に実績を上げている保全計画づくりのプロセスを経験できたことも然ることながら、サポート係として、希少動物種保護・増殖の分野では世界でも第一人者であるような専門家の方々との交流が持てたこと、その素敵な人間性に触れることができたことも大きな収穫だったように思う。
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