父島で最も流域面積の広い、唯一まともな川といえる川である八瀬川が海に注ぐ場所に、小港の白い砂浜が広がっている。背後を壁のような急斜面の岩山に阻まれ、正面の湾は両脇を険しい岩肌の岬に囲まれて、他の浜とは違う、小港ならではの、特別の空間がある。
最近、この場所が気に入ってよく通っている。何も予定が入っていない土曜日に朝から夕方まで丸一日いることもあれば、仕事が早めに片付いた日の夕暮れ時にちょっと泳ぎに行くこともある。
ひとつの場所でも、天気や時の移ろいとともにいろいろな表情がある。強い陽射しに照らされてテカテカ光るモモタマナの木の葉の明るい緑色、まぶしいくらいの白い砂、そして陽の差す角度によって微妙に色を変化させる青い海。海の色は、青というか、どちらかというと水色に近い。夕暮れ時になると小港の正面に開けた狭い湾口にあつらえられたように沈んでゆく夕陽、陽が暮れた後の薄青色の空に瞬きはじめる星の数々。時間の経過とともにその星も数を増し、闇が訪れる頃には空が無数の星で埋め尽くされる。
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