2010年7月12日月曜日

ピグミーコンサート

インドでのフィールドワークから、7月7日にイギリスに戻ってきた。戻ってきてみると、イギリスはすっかり夏の盛り。出発前と比べると日差しもずいぶん強くなっている様子。

そんな中、ロンドンで活動しているピアニスト松本さやかさんと、人類学者で長らく中央アフリカはカメルーンの熱帯雨林に住むピグミーの研究をしている服部志帆さんとが共演するチャリティーイベントを見に、先日7月9日にロンドンまで行ってきた。

服部さんが大学生の時、自然とともにあるピグミーの人びとの暮らしに触れたくて、単身でアフリカの熱帯雨林に飛び込んで行ってピグミーの人びととともに暮らし始めた体験談やそこでの人びとの暮らしの様子について、スライドショーを交えて臨場感のあふれるトークがあり、その間あいだには松本さんのピアノ演奏。服部さんの語るストーリーにぴったりと寄り添うような演奏で、なかには松本さん自作の曲もたくさん含まれていた。


ピグミーの人びとがどれだけ心やさしく、平等であることを大切にする人たちなのか、物をほとんど持たず、シンプルながらも心豊かな生活をしているのかということが、服部さんのトークを通してよく伝わってくる。なかでも印象的だったのが、彼らが森の中で狩猟採集の移動生活をする時には、生活必需品がすべてちいさなひとつのバスケットに収まってしまうこと。ゲストで来ていた服部さんの師匠、ロンドン大学の教授はこれをTechnological minimalism、必要最小限主義と呼んでいた。


ピグミーの人たちが古くから持つ音楽と踊りの文化は素晴らしく、古代エジプトのとあるファラオはこれを伝え聞いて、God of dancers、踊りの神と称して下臣に招へいするように命じたとか。松本さん曰く、彼らの音楽の素晴らしさはポリフォニーにあるとのこと。通常僕たちが耳にする音楽はモノフォニーといって、メロディーが主役でそれに伴奏が伴うというスタイルであるのに対して、ポリフォニーでは音楽を構成するひとつひとつの音の成分がそれぞれに奏でながらも、全体としてひとつの音楽になる。ピグミーの素晴らしいポリフォニーの根源には、平等を重んじ、主従関係を作らない彼らの社会生活があるのではないかというのが松本さんの解釈。なるほど、説得力がある。


ピグミーについては今までも論文をいくつか読んではいたけれども、そうやって単に情報として頭に入れるのと、こうやって物語、写真、そして音楽の三つの要素で体感するのとでは全く違う。ピグミーには未だ会ったこともないけれど、彼らが親しく思えるようになった素敵なイベントだった。

多くのピグミーの生活は、熱帯雨林の減少とともに危機にさらされている。ピグミーの人たちの生活を守るためにも、そしてその生活の場である熱帯雨林を守るためにも、マイノリティーであるピグミーのファンの輪を広げる松本さんと服部さんのような活動はとても大事。こんな活動を通して、ピグミーのように自然とともに生きる人たちから僕らが学ぶことは多い。

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