こんな中途半端なタイミングですが、ヒマラヤ保全協会の投稿記事の最終回を投稿したので、今回はそれを掲載しておきます。
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マラウイ、ネパール、そして小笠原。
3つの地域を比較してみえてくるもの
第4回(最終回) 実効性のある環境保全活動の考え方
今まで3回の議論を踏まえると、マラウイ湖国立公園、ネパール山間部及び小笠原の3地域には、人と自然との関わり合いや環境問題について三者三様の事情があることが分かります。では、保全活動の考え方は、この3つの地域ですべて異なるのでしょうか?否、活動の内容はそれぞれ違うにしろ、根本の考え方には共通点があります。それは、行政や環境保全団体のニーズではなく、地元住民のニーズに合った活動を、地元が主体になって長期的に展開する、という点です。
マラウイ湖国立公園での問題の根本は、国立公園内の村々の人口増加と、それに伴う食糧・エネルギー資源の不足。この解決策は至ってシンプル。人口増加の抑制と代替資源の供給です。これが地元のニーズで、言うは易し行うは難し、ではありますが、ゴールを設けて地道に取り組むしか、国立公園内の自然を守る手立てはありません。

ネパール山間部では、エネルギー資源や家畜飼料としての森林利用のために、集落周辺か辺縁部へと森林が徐々に衰退しています。NGOヒマラヤ保全協会(IHC)がプロジェクトを展開する村々では、苗畑と植林の地道な活動が実って、資源供給源が確保され、状況が改善されています。これは、IHC元会長の故川喜多二郎先生による徹底した地元住民のニーズ調査に端を発し、地元のIHCN(ネパール現地事務所)との長い協働を通して成し遂げられたもので、細々とした問題はあるにしても、途上国における環境協力のお手本といえるものだと思います。

小笠原では、実生活と自然環境とのつながりが弱いために、特に陸域に関しては住民の関心が低く、例えば捨てネコがアカガシラカラスバトなどの固有種を脅かすなど、人為起源の外来種問題が顕著です。この場合、地元住民には潜在的な情報のニーズがあります。具体的には、固有種について、地元住民への見せ方、伝え方を工夫して、世界で小笠原だけにある宝物という意識を育てること、そして宝を守るために住民が注意すべきことを普及させることが重要です。

自然環境にまつわる問題の本質は、人々の自然環境へのかかわり方にあります。従ってその改善のためには、野生対象の調査・研究だけでは限界があり、人々のニーズを把握した上で、自然環境との共生関係を築くことに注力する必要があります。
2 件のコメント:
こんにちは。ヒマラヤ保全協会前事務局長の田中です。イギリスに留学したことは、会報で知りました。私が留学中に、サセックスに来てくれたが昨日のことのようです。その後タイでの仕事を終え、評価の専門家としてフリーで活動しています。来年2月に3週間イギリスに行くので、会えると良いですね。それでは勉強がんばってください。
田中さん、お久しぶりです。書き込みありがとうございます。IHCのメールは引き続き頂いているので、田中さんのメールもちょくちょく拝見しています。元気にご活躍されているようですね。
NGO活動の評価をされているという話を以前目にしましたが、こっちで勉強しながら、その重要性を実感しています。
環境保全分野には、WWFやConservation Internationalなど、大手企業並みの超巨大NGOがひしめいていますが、活動理念のもとに全てが正当化されて、バランスを持った観点で自身の活動を見ることができなくなっている傾向がありますね。ホームページやレポートでもいいことしか書いていないし、近年はWorld Bankや日本のODA資金も相当量つぎ込まれている以上、彼らの活動を第三者の観点で評価する必要があるんじゃないでしょうか。田中さん、こういう所に斬り込んで行ってください(笑)。
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