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エコツーリズムとは何なのか、それを一見して教えてくれる例がマラウイ湖国立公園にはあった。公園内、湖に面して長いビーチを持つチェンベ村は風光明媚な観光地。そのビーチに沿って、村人の住まいを押しのけてロッジが増えつつあった。村には水道はなく、入浴や洗濯などは全て湖の水頼みで、浜辺は重要な生活の場。それが、ロッジが増えることにより次々に狭められていた。住民は引き換えにどれだけのものを得ていたのだろうか?現金の必要に迫られて土地を売るのかもしれないが、得られるお金は一時的なもの、残るのはロッジ清掃や簡素な民芸品販売の仕事くらい、釣り合いが取れているようには思えない。

沖合に目を転じると、無人島に、森になじむ素朴なロッジがあった。島へのアクセスはカヤック。地元のガイドが同伴し、島のガイドや食事の面倒まで見てくれる。ロッジが島を借り上げた賃借料は国立公園に収められ、島の周りの手つかずの自然を守るために使われる。何よりも、村人を雇い、ガイドに養成して継続的な雇用を生み出し、彼ら自身も周りの自然の価値を知る良い機会になる。観光客は地元ガイドの紹介でありのままの自然を楽しみ、それが地元には持続的な雇用と環境を守るための資金をもたらし、地元の人々が地域のもつ自然の価値を認識するきっかけを与える。これが、エコツーリズム。
小笠原では、太古の昔から変わらない自然の営み、イルカや冬に訪れるザトウクジラ、固有種溢れる森、それを取り巻く美しい景観を求めて観光客がやってくる。生の自然が売りの小笠原では自然ガイドに携わる人は多く、訪れる人が自然を楽しみ理解する工夫、観光利用により自然を損なわないルールづくりなどの取り組みを進めている。
ネパールについては、4年ほど前、調査に巡ったアウロやナルチャンなどの村々の、個性ある家並みや整った石畳の道、そこから眺めるアンナプルナの美しい山並み、そして地元の方々の温かさが忘れられない。こんな素の自然や人々との交流を楽しむエコツアーをヒマラヤ保全協会も進めているが、このような活動が広がり、より多くの人々がネパールの良さを知り、それが、村々の素敵な文化や自然が守られつつ発展する、良い流れに繋がることを願っている。
