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今回は、前回お話したマラウイ、ネパールそして小笠原における人と自然との結びつきを踏まえて、この3地域の環境問題を比較し、環境問題の変遷を眺めてみます。
はじめに、「環境」というコトバの意味を確認します。「環境」とは、たとえば生態学者によって「外的要素の総和」などと説明されるように、中心人物がいて、その周辺で中心人物を支えている要素を合わせたものという解釈があります。これを踏まえると、私たちにとっての環境とは、私たちを取り囲み、私たちを支えてくれているもの、価値のあるものの集合です。
ただ、「私たち」と言っても、住む地域の文化や生活水準によって価値観は様々ですから、地域によって「環境」の認識は異なり、従って「環境問題」の質は異なります。では、マラウイ、ネパール、小笠原で「環境問題」はどのように異なるのでしょうか。
マラウイ湖国立公園では、人々の生活が自然に強く依存している状況の中で、人口が増え、料理や魚の燻製を作るのに必要な薪を採り過ぎて林が再生しなくなり、薪採りができなくなるだけではなく、降雨が地面にしみ込まなくなって雨期に洪水が増える、乾季には水が枯れて畑の作物が実らなくなるなど、人々の生活に直結する環境問題が深刻です。

ネパールの農山村ではマラウイ同様の森林劣化が広くみられるようですが、出稼ぎ増加による人口圧の減少、IHCなどの植林活動により一部の地域では改善しつつあります。一方ではプラスチック製品の普及に伴うゴミ問題、カリガンダキ川沿いの自動車道路建設に伴う地水環境の変化やその住民生活への影響が心配されるなど、発展に伴う環境問題の多様化がみられます。

そして小笠原。島民生活が、内地からおがさわら丸によって運ばれてくる物資でほとんど賄われているために、人々の生活の自然への依存がないに等しく、大規模な開発も落ち着いた中で、今は生物多様性の問題が注目されています。これは小笠原という海洋島独特の問題でもありますが、この地で独自に進化した固有種の多い生態系に、人が持ち込んだヤギやネズミなどの外来種が入り込み、その影響で多くの種が絶滅の危機に瀕していることを問題とするものです。
以上、発展の程度に沿って環境問題を眺めてみましたが、発展に伴い人々の視野が広がり、環境問題は人々の生活に直結するものから周辺的なものへと変遷する傾向があるようです。
